最近、“回想”というテーマで認知症に迫ろうと考えています。認知症で一番多いアルツハイマー病では、近時記憶(数時間前の記憶)が最も思い出せません。一方、遠隔記憶(昔の記憶)はずっと覚えているのが普通です。苦手な近時記憶を鍛えるため、日記を書くよう患者さんに勧めるのですが、なかなか出来ない人も多くいます。そこで回想を考えました。回想は昔の記憶を思い出す行為です。得意の遠隔記憶ですから、患者さんも取っ付きやすいのです。
記憶は大脳辺縁系で整理され、前頭葉の指令で必要な事だけ側頭葉で保存されます。アルツハイマー病ではまず大脳辺縁系がやられるので、記憶が整理できず、日記が書けないのです。しかし回想で昔整理した記憶を呼び戻すのは前頭葉で、やる気さえあれば昔の記憶を大脳辺縁系まで戻すことができます。昔、自分が整理した記憶を久しぶりに確認することで、大脳辺縁系は昔の元気を取り戻すことになります。
-
回想
-
日記
以前「もくもくワクワクは認知症を予防する」という本を書きましたが、「もくもく」(単純な作業、運動を続ける)は大脳辺縁系を、「ワクワク」(楽しい事を行う、楽しみに待つ)は前頭葉を元気にし、認知症を予防しようというものでした。回想で大脳辺縁系の活力がよみがえれば「もくもく」復活です。その引き金は遠隔記憶を引っぱってくる前頭葉で「ワクワク」にもなります。元気になった大脳辺縁系は、近時記憶を「もくもく」と整理出来るようになり、日記も始められるようになります。日記に明日の予定を書き足せたら、さらに「ワクワク」が増えます。
この原理を利用して『もくもくワクワク人生日記』を作りました。
患者さんに始めてもらおうと思っています。