名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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~高齢者の肺炎が恐い~

 以前は、肺炎は我が国の死因第4位でした。しかし最近第3位に"昇格"しました。いよいよ肺炎を軽視できない時代になってきたのです。しかし癌や血管障害(心筋梗塞、脳卒中など)で命を奪われるなら諦めもつきますが、肺炎で死ぬのはちょっと惜しい感じがします。

老化すると免疫が下がるからね

 肺炎は免疫力の低下により起こります。癌が進行したり、何らかの慢性疾患が長引くと、免疫力も低下していきますが、何と言っても免疫力の低下の大部分は老化によるものだと思います。
 そもそも老化が起こりやすい臓器と起こりにくい臓器があることが知られています。最も老化しにくいのは心臓だと言われています。心臓が動かなくなれば終わりなわけで、やはり最重要な臓器が一番長持ちするよう作られているのです。次に肝臓や胃などの消化器も老化しにくい臓器です。その次あたりに脳がきます。脳を鍛えずにいると、認知症の危険性も増すのですが、心臓や消化器は脳より丈夫な場合が多いので、認知症になってもなかなか死ねないわけです。案外弱い(老化しやすい)臓器が腎臓で、内臓の中では最も早く老朽化します。腎臓は体内の毒物を尿として体外へ排出する働きがありますので、腎不全を起こすと「尿毒症」という病名が付きます。 最も老化の早いのは何かというと、それは胸腺という臓器だそうです。胸腺はいわゆる免疫を行う臓器で、老化による免疫力低下の理由は、これを司る臓器、すなわち胸腺の老化が早いからなのです。だから年を取ってからの肺炎が恐いのです。

 ところで足腰の老化は、他の臓器に比べ、早いのでしょうか、遅いのでしょうか? 他の臓器は、大体老化の速度が決まっています。"心臓を鍛える"、"胃を鍛える"などという言い方をしますが、医学的にはそんなに鍛えられるものではありません。唯一、脳だけは鍛錬による差が大きいと思われます。そして更に鍛え甲斐があるのが足腰なのです。
 足腰、すなわち筋肉や骨の老化は最も個人差が大きいと言えます。心臓などよりは老化は早いのは事実です。"たくさん歩くと苦しい"という原因は、心臓や肺が苦しいというより、足腰が苦しいという場合が多いのです。しかし心臓などよりずっと鍛錬により老化が予防出来るのも間違いありません。足腰の老化を心臓の老化と同程度に伸ばすことが出来たら、「ぴんぴんころり」が実現されるのです。そしてそうなれば、自然に免疫力も向上するでしょう。肺炎は免疫力ばかりか、足腰の老化により発症する疾患なのです。

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