名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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川の流れのように

 川の流れを想像してみて下さい。雨が少ないと川の流れは減っていきます。誰かがゴミを捨てれば下流で溜まってしまうこともあります。人体では、川が動脈、雨が水分、ゴミが糖や脂質にあたります。

 水分の摂取が少ないと、血液は濃くなっていきますが、これは雨の降らない時の川の様なものです。場合によっては、干上がってしまう危険もあります。人体において最も血が濃くなるのは夜中ですので、寝る前や夜中起きた時の水分摂取を心掛けましょう。

 川に捨てられたゴミは川が蛇行した所に溜まり易いものです。動脈においても、蛇行した場所に動脈硬化が生じ易いのです。川の水量が減ってくると、余計にゴミが溜まり易いのは当然です。また年月が経ち、整備が遅れた川にもゴミは溜まり易いといえます。これが老化による動脈硬化で、ある程度仕方ない現象ですが、整備は怠るべきではありません。整備とは、運動や食事療法と若干の医学的治療ということになります。ゴミを少なくする(糖尿病や高脂血症の管理)以外に川の流れの強さを適度に調節する事も大切です。川の流れが強すぎると、川岸の一部が壊れることもあります。川の流れの強さが血圧で、川岸が壊れることが脳出血や動脈瘤破裂にあたります。

 川岸に溜まったゴミは、川の流れの障害物になりますから、そこにどんどんゴミが引っかかっていくこともあります。これが動脈硬化の拡大にあたります。管理が悪いと、ゴミで川の流れがせき止められてしまう事態も考えられます。また大きくなったゴミの塊がはがれ、下流に流れて行き、先でつまってしまう危険もあります。このようなことが人体で起こると、脳梗塞や心筋梗塞が発症するのです。

 人体では、一度溜まったゴミ(動脈硬化)は取り除けません。それ以上溜まらぬよう、川の水(血液)をきれいにするしかありません。そのうちに溜まったゴミもゴツゴツしていたのが、滑らかになっていきます。動脈硬化の強い患者さんを一年毎に頚動脈エコーで調べていくと、管理が良い方はだんだん動脈硬化が小さくなっていきます。これは動脈硬化が取れるのではなく、表面が滑らかになり安定するからなのです。後は、その川の流れが衰えないように努力(歩くこと)せねばなりません。

 人体において、「川の流れ」というのは生命に関わる営みなのです。昭和の大歌手の歌のように、波乱に満ちたドラマが毎日繰り返されているのでしょう。

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