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起立性調節障害(OD)は更年期障害と似ている

 中年女性に女性ホルモンの異常が起きて更年期障害が起きることは既知の事実です。加齢に伴いホルモンバランスが狂うことが原因なのですが、これと同様な病態が起立性調節障害であるともいえます。ホルモン分泌が減っていく更年期とは逆に、思春期はホルモン分泌が増えていく過程であり、体の成長にホルモンのバランスが追いつかないのが起立性調節障害の実態ではないかと思えてきます。

 女性ホルモンを促す性腺刺激ホルモンは脳下垂体から分泌されますが、成長ホルモンも脳下垂体から分泌されます。また自律神経の経路も脳下垂体を通ります。このあたりの調節障害が更年期や思春期に崩れるのでしょう。

 起立性調節障害の正確な病態はまだ解明されていません。しかしここで強調したいのは、起立性調節障害も更年期障害と同じで加齢に伴う一過性の機能障害であり、時が経てば自然に治っていくということです。更年期障害で今にも死にそうなことを訴えていた御婦人も、いつの間にか元気ハツラツな中年女性に変身していきます。起立性調節障害もいつかは治っていくのです。

 起立性調節障害も更年期障害も一過性のホルモン異常で、1~2年生活に支障が出るだけと言ってしまえばそれまでですが、起立性調節障害における思春期の1~2年はかなり大切な時期といえます。それだけに我々医療者も全力で対応しなければと痛感しています。

起立性調節障害のホルモン異常

 どうやら起立性調節障害ではホルモン異常が色々と起こっているようです。起立性調節障害は起立という活動に際して障害が生じる病気なので、活動時やストレス時に分泌されるホルモンの異常がまず疑われます。それらは「戦いのホルモン」といえます。

 「戦いのホルモン」としてノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどがあります。これらは血管、心臓、筋肉などの動きを活発にさせます。起立性調節障害ではこれらのホルモンの分泌異常のため、体内で「変な戦い方」が起こるのです。その中でも、まずノルアドレナリンの分泌に注目すべきと私は考えます。

 「戦いのホルモン」に対抗するのが「安らぎのホルモン」で、情緒を司るセロトニン、睡眠に導くメラトニンなどが挙げられます。起立性調節障害ではこれらの分泌異常も起きている可能性があります。体内の「安らぎ」が少ないのです。

 それらのホルモン異常の結果、ふらつき(場合によっては失神)、頭痛、腹痛、情緒不安定、不眠などの症状が子供たちを襲うのです。

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