名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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これからの医療、福祉のあり方は?

"" 私はこれまで医療だけをやってきた感じで、まったくの経済オンチ(常識ハズレ)で半生を送って来たように思います。しかし昨今の切迫した経済情勢は、さすがの私の頭にも響いてきているように思えます。

 現在日本の借金は約1000兆円と言われています。借金の大きな原因が社会保障費であり、この改革が今後の我々の生活を大きく左右するわけです。社会保障費は現在年間約100兆円で、大きく分けると年金と医療・福祉が半分ずつを占めます。今後、これらは共に増えていく訳で、無駄は許されないのです。

 それでは少しでも社会福祉費を節約するにはどうすれば良いでしょう? ヒントは「寝たきり」、「延命」、「尊厳」という言葉にあると思います。誰も寝たきりになってまで生きていたいとは思わないでしょう。しかし現在の日本には約200万人の患者が寝たきり状態で生きているのです。寝たきり患者は月に50万円位の費用がかかりますから、一ヶ月に何と一兆円の医療・福祉費が寝たきり患者に費やされているのです。誰も望まない寝たきり状態にこれだけの莫大な費用が投入されているのです。

 寝たきりになるのは運命ですから仕方のない面もありますが、医療・福祉に携わる者として、思い切った転換も必要に迫られる時期が近いように感じます。私の提案は、「予防・集中治療・看取り」を徹底し、明確にすることです。ほとんどの方が元気なら長生きしたいと思っているはずです。そのため、私がこれまで述べてきた「養生訓」を参考にしてもらい、出来るだけ"心技体"の養生に努めることがまず前提です。精一杯「予防」に努めるのです。これは自分のためだけでなく、家族、そして国家のためと自覚すべきです。医療費を無駄にしてはいけません。あなたの医療費の大部分は国が負担しているのですから。自分勝手に治療を受ける人は、もう来院するべきではないし、自費でいいのではないでしょうか?

 頑張って予防してきたにもかかわらず、重篤な疾病に陥った場合は、急性期病院で最高の高度医療を受けて完治を目指します。この「集中治療」にはどんなにお金がかかっても、惜しくはありません。国も出来るだけそれを支援する制度を作るべきです。しかしその期間は2週間位を目安とし、治癒しなければ「看取り」へ移行するのです。そこからは費用をかけるべきではありません。それでも生きたい、生かせたいなら、自費に近い費用を負担していただくのです。残酷な提案ですが、我が国では、そこからの医療・福祉費が多すぎるのではないでしょうか? 個人の尊厳を重視するなら、過度な延命は止めるべきです。尊厳を大切にした「看取り」を構築していく必要があります。「予防・集中治療・看取り」のメリハリを徹底すべきと考えます。

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