名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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自分の動脈硬化の程度を把握すること

"" 長寿のための「技」とは、「心」と「体」の両面がしっかり出来ている上に、付け加える医学的な管理であると私は考えます。そこで私の専門分野である動脈硬化について述べたいと思います。

 日本人の三大死因は、癌、心臓病脳血管障害です。この内で、癌はある程度しょうがありませんが、心臓病と脳血管障害は発症をかなり予防出来ます。これらの原因の多くが動脈硬化から来ているからです。心臓の血管(冠動脈)がつまると心筋梗塞、脳動脈がつまると脳梗塞が起きます。脳動脈は破裂することもあり、脳出血やくも膜下出血にもなります。これらを予防するためには、それぞれの血管の動脈硬化の程度を把握しておかねばなりません。

 私は神経内科医ですので、脳血管障害について述べます。脳動脈と言っても、頚動脈のように直径1cm近い太い動脈から0.1mm以下の細動脈まで分かれます。まず首の所にある頚動脈はエコーで簡単に動脈硬化を調べることが出来ます。動脈硬化により頚動脈の内面にプラークという粥のような塊が形成され、これが巨大になると、血管がつまりそうになることがあります。プラークは60歳代まではほとんど見られませんが、それが見つかったら、動脈硬化体質であると推定されます。渡辺クリニックでは、各年代のプラークの大きさの標準がわかっていますから、その患者の血管年齢がある程度評価出来ます。例えば血清コレステロール値が250以上でも、頚動脈エコーでプラークが全くなければ、さほど問題はないのです。しかしプラークが多ければ(動脈硬化が強ければ)、サラサラ血でなくてはならず、200以下にコントロールせねばならない時もあります。"器(動脈)と中身(血液)"で治療の強さを決めるのです。また頚動脈硬化が強いと、体中の他の動脈にもプラークがあると覚悟せねばなりません。心臓や足の動脈硬化も調べる必要があります。

 MRIとMRAもよく脳内の動脈硬化の推定に用います。MRAで頚動脈の続きの脳動脈を描出できますが、このレベルの血管は、木で言うと幹~太い枝にあたり、つまると命に関わります。頚動脈エコーとMRAで血管がきれいなら、一般に動脈硬化は軽いと言えます。長生き出来る資格が十分にあるのです。もっと細い脳動脈は描出できませんが、MRIで小さな脳梗塞が発見されれば、細動脈に動脈硬化があると予想します。頚動脈エコーやMRAはきれいなのに、MRIでたくさんの小梗塞が認められることもあります。このような場合は、長生きは出来るが、徐々に足が弱ったり認知障害が出てきたりします。"長寿なき長命"の可能性があり、気合を入れる必要があります。

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