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何が何でも寝たきりにならぬよう

"" 今,我国では人口の高齢化により20~30年後には,医療、介護が現在の2~3倍となり、日本経済の観点からも危惧されている現状です。そんな中で「何が何でもねたきりにならぬよう」という話題を取り上げてみました。

 動けなくなり寝たきりになると、家族や国家にまで迷惑をかけてしまいます。昔は65歳以上というと別格的存在で、周りの者が大勢で世話をしてくれました。ところが高齢者が全体の2割を占める現代においては、それはあまり期待出来ません。ほとんどの高齢者は、"人に迷惑がかかるくらいなら死んだ方がまし"と考えているはずです。しかし実際にそんな事態に陥った時、すぐに死ねるのでしょうか?

 寝たきりになって死亡するまで期間は、平均7~8ヶ月と言われます。医療、介護保険の費用を合わせると、その間に300~400万円の費用がかかります。それまで必死に働いてきた高齢者に、これ位の出費は安いものかもしれません。しかしほとんどの人が寝たきりになることを望んでいなかったのですから、無駄な浪費であるとも言えます。日本には高齢者が2000万人以上いますから、過保護にされすぎて全員が寝たきりになったら、日本は破産してしまいます。

 名古屋市の統計では、寝たきりの原因の第一位は脳血管障害(脳卒中)です。寝たきり全体の約4割を占めます。脳血管障害はかつて我が国において死因も第一位でしたが、現在は癌や心臓病の方が死因としては多くなっています。しかし寝たきりの原因としては断然多いのです。脳血管障害こそは"長寿なき長命"を引き起こす最大の原因と言えます。第二位は骨折、骨粗しょう症など整形外科的原因です。転倒が引き金になり、寝たきりへ移行するのです。転倒防止のためにも、歩行の習慣をつける必要があります。第三位が認知症です。初めの頃は徘徊など問題行動が激しくても、末期は寝たきりに進行し易いのです。以上の3つが高齢者の寝たきりの原因の大部分と言えます。

 寝たきりになったらすぐに天国へ行けるという方法は、今のところありません。"寝たきりになるくらいなら死にたい"という尊厳はなかなか通らないのです。図らずも寝たきりになってしまったら、後の祭りです。私は患者さんに、「歩け、歩け」と指導しますが、健康になってもらいたいという目的以外に、座りきり、寝たきり状態に陥る前に"ピンピンコロリ"で天国へ旅立って欲しいと言う願いも込めているのです。そのような訳で、今から長寿のための「心」「技」「体」の養生に励む必要があります。先に述べましたが、最も有用な方法は「歩くこと」です。歩くことが苦にならず、むしろ楽しいと思える位に"歩くための心技体"を身につけましょう。歩くことが長寿の願いを叶え、また"長寿なき長命"を減らすと信じます。

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