名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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起立性調節障害 "怠け者"の真実

 不登校の児童に起立性調節障害がみられ、そのために朝起きられない場合も多いことが医学的に実証されています。不登校の児童の多くが、ずる休みではなく、立派な病気のため学校に行けないのです。私のクリニックにも、大勢そのような患者さんが受診されます。児童ばかりでなく、もう社会人になってからでも、朝起きられない方が助けを求めにやって来ます。そのような患者さんたちは、"怠け者"と烙印を押される場合もあり、何とかしてあげなければと考えています。

 どうして起立性調節障害が起こるかについては、色々な原因がありますが、交感神経の亢進による起立時の頻脈が多くの場合に認められます。交感神経は心臓に対しては拍動を増やす方向に働き頻脈を起こしますが、動脈に対しては収縮の方向に働きます。足の動脈が異常に収縮すると、血流は足の先に追いやられて、足に血液が貯留してしまいます。それにより、心臓に血液が戻らなくなり、心臓は全身に血液を十分送れなくなります。その結果、脳貧血が生じるのです。また脳周辺の動脈も収縮することにより、脳貧血を助長しますし、収縮していた動脈が反動で拡張した時、片頭痛を起こす場合もあります。起立時の頻脈、脳貧血に加えて片頭痛が重なれば、朝元気に登校(出社)することは至難の業と言えるでしょう。

 そもそも交感神経は、内臓を消耗させる自律神経ですから、起立性調節障害の患者はやせて青白い顔をしています。いわゆる"虚弱そうな女の子"に多い傾向があります。男性でも結構多くみられますが、やはり痩せ型の人に多いようです。

 起立性調節障害は、放っておいても自然に改善していくことが多いのですが、数年は"怠け者"でいなければなりません。また学童から思秋期に発症することが多いので、人生の大切な時期を無駄に過ごしてしまう危険もあります。何とか早く治さねばならないと思う反面、あせっては駄目であるともいえます。背後に自律神経失調があるので、ストレスを貯めてはいけないのです。患者に指導するのは、自律神経改善のため、とにかく散歩で良いから運動することです。足に血液が貯留しているのを心臓に戻すためにも、足の運動は不可欠です。

 起立性調節障害の患者は"怠け者"と言われないよう追い詰められた状況で日々を送っている事を理解してあげなければなりません。他の人と同じように生活する為には、数倍の努力が必要かもしれません。しかしそれを乗り越えねば人生が開けないのも事実です。"怠け者"の真実を理解しつつも、叱咤激励する態度が必要と思います。

 私の書いた「自律神経失調症」の本の中でも生活改善法を取り上げています。一読頂けると参考になると思います。

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