名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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「もくもくワクワク」で認知症を予防する

 認知症の急増は我が国にとって想定外の事態のようです。今、認知症に対して取り組まねばならない最重要な課題が"予防"であると言えます。

 ここで心得ておかなければならないのは、認知症の薬の役割です。薬は認知症を"治す"訳ではなく、"止める"のが目的なのです。認知症の中で最も多いアルツハイマー病では、アミロイドという物質が脳の中に溜まり、それが神経細胞を侵すために起こります。"治す"というのはアミロイドが溜まらないようにする薬のことで、これは当分開発されないでしょう。

 アミロイドというのは"脳のシミ"のようなもので、老化により誰でも徐々に溜まっていきます。単に溜まるだけならそれほど問題は起こらないのですが、これが神経細胞を侵し始めると、認知症が起こるのです。神経細胞が侵されると、他の神経細胞へ情報を連絡する元気がなくなっていきます。神経細胞は、神経伝達物質を放出して他の神経細胞に情報を伝えるのですが、アルツハイマー病ではこの神経伝達物質(特にアセチルコリン)が減っていくのです。仕方がないので、これを薬で補充するのが、現在の治療法です。

 しかし考えてみて下さい。神経細胞自体に元気がなければ、いくら伝達物質を補充しても、情報は伝達されるはずはありません。情報を取り入れる元気がない訳です。情報が伝わる窓口がシナプスで、神経細胞の元気さは、シナプスの数で決まると言えます。シナプスが少ないと情報が神経細胞の中に入って来られないのです。前置きが長くなりましたが、「適切な訓練でシナプスを増やす、即ち神経細胞を元気にする努力」が肝心で、努力や訓練なしでは薬も全く効かないのです。

 適切な訓練の参考にして頂くため、『もくもくワクワクで認知症を予防する』という本を出版しました。論旨は"忘れるのは仕方ない。困るのは情緒の不安定と寝たきりになることだから、それらを防ぐために必要な訓練をしよう。その結果、シナプスが増える"というものです。

 情緒不安定は「もくもく」で、寝たきりは「ワクワク」で防ぐ事ができるのです。「もくもく」感は傷つきやすい大脳辺縁系を守り、情緒や記憶を安定させます。「ワクワク」感は、脳の中でも最もリーダー的役割をする前頭葉を元気にし、気力・意欲を高めます。「もくもく」、「ワクワク」を得るにはどのような訓練を行えば良いのでしょう?

 呆け始めた人や、認知症患者のご家族の方に『もくもくワクワクで認知症を予防する』を読んでいただければ参考になると思います。

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