名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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時間を無駄に使うことも大切

 自律神経を良好な状態に保つにはスローライフが良いといえます。どうも我々現代人は、時間を大切にしようという観念が染みついているように思えます。しかし考えてみれば、「人生五十年」の時代に比べると、現代人はその倍近くの人生を送らねばならないのです。そう焦って生きると、疲れてしまいます。

 勤勉で無駄を嫌う人が、「思うように仕事がはかどらない」、「時間を無駄使いしてしまった」と焦る気持ちの中で、ストレスが生じるという側面があります。このようなタイプの人に自律神経失調症が起り易いように思われます。この時、脳内(心)ではノルアドレナリンという物質が分泌され、イライラ、カッカ、胸騒ぎといった感情が生じてしまうのです。このストレスが心にとどまらず、体内にストレスが及んで内臓が不調になる状態を自律神経失調症と言うのです。

 このようにストレス下の精神状態の過程で、自律神経は傷んでいき、自律神経失調を介して内臓にも病変が起こる可能性が生じるのです。前にも説明しましたが、自律神経とは中枢と内臓を結ぶ電線のようなものです。傷んだ電線を丸ごと交換することは人体においては不可能です。しかし心配は要りません。自律神経という電線は、悪い電気を流さずそっとしておけば、自然に補修されていくのです。

 電線をそっとしておくには、スローライフなのですが、上に述べたように、精神的にはあせらないことが肝要です。時間の無駄を無駄と思わない心境に達することです。前へ前へ行こうとせず、ゆっくりその場に留まって、一度心を無にしてしまう気持ちが必要です。"無我の境地"とでも言うのでしょうか?このような時、脳内にはセロトニンという物質が分泌されているそうです。そのためには、先を急がず、その場に留まって、悠然と時間を送る姿勢、態度が必要なのです。焦って何かを得ようと空回りするより、時間を無駄にするかのようなライフスタイルの方が、むしろ得る物が多いこともあります。よくわかりませんが、このようにして何かに気付き、成長することを、"悟りを開く"と言うのだと思います。セロトニンは悟りを起こす物質であると考えます。

「時間がない」と焦っている人、イライラやカッカが強い人、自律神経失調の人は、一度何もせず時間を無駄にすることも一策であると思います。

"急がば回れ"と昔から言われます。一生のうち、数週間、数ヶ月何もせず、その場に留まることも有用だと思います。

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