名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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~そっくり返し~

 高齢者には「そっくり返し」が必要です。加齢とともに一部の筋が特に縮んで硬縮していきます。全体に体が前に曲がっていくような姿勢になります。縮んだ筋を伸ばさねばなりません。そっくり返しとは、縮んだ筋を伸ばすストレッチ運動なのです。どこをそっくり返しすれば良いのでしょう? 以下にその例をいくつか述べます。

  • 1
  • 足先を返す
  • 足先を返す
     まず足の先からそっくり返しをしましょう。よく高齢者は「足がむくむ」と訴えます。これは足先の血液が心臓に戻るのが遅いのが原因の一つに挙げられます。足の先の血液が重力に逆らって心臓まで登っていくには、足の筋肉の協力が必要です。足の筋肉が収縮して“乳しぼり”のように血液を押し上げていくのです。その中心になる筋肉が下腿(膝下の)筋で、これを強化するため足の甲をそっくり返すのです。一般に下腿の筋を鍛えないと、つま先が挙がらなくなります。その結果、ちょっとした段差でも躓いてしまいます。転倒予防のためにも、足先をそっくり返しましょう。

  • 2
  • 太腿を背中へ反す
  • 太腿を背中へ反す
     次に、足の付け根もそっくり返す必要があります。「老人姿勢」というのは、重心(骨盤)が後方にずれ、これを補うため前傾姿勢や膝曲がりになります。腰(骨盤)のところで“くの字”に曲がる姿勢になるわけです。こうなると腰痛も起きるし、転倒しやすくなります。“くの字”を伸ばすため、足の付け根を伸ばす努力をすべきです。テーブルにつかまり、片足で立ち、反対側の大腿(太もも)を背中の方に反らすのです。こうすると、ソ径部の筋が伸び、お尻の筋(大殿筋)が鍛えられます。

  • 3
  • 胸張る
  • 胸張る
     もう一つ、高齢者は「胸を張る」努力をすべきです。先ほどの老人姿勢の延長でもありますが、高齢者は背中が前傾し、さらに円背(猫背)になっていく傾向があります。胸を張るには、大胸筋などの胸の筋を伸ばして、背中の筋肉を縮める必要があります。筋肉をゴムと考えてみますと、年月の経ったゴムは伸びて弾力がなくなります。背筋がまさにそれで、老化とともに弱って伸びていくのです。したがって背中は丸まって、老人姿勢に拍車がかかります。背中が丸くなると転び易くなるし、第一見栄えが良くありません。また肺を圧迫するので、深く呼吸しづらくなり、肺炎の原因にもなりかねません。“老人よ、胸を張れ”なのです。

 そっくり返しはラジオ体操のダイジェスト版のようなものです。ラジオ体操をしっかり続けるのでも構いませんが、これに加えて上述のそっくり返しでだめ押しすれば万全です。大体一日に2,3回、20~30秒続けるようにして下さい。

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