名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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「認知症」わかってる?

 「認知症になるくらいなら死んだほうがマシ」「自分が認知症になるわけない」「認知症とアルツハイマー病とどう違うの」「痴呆症なんて恥ずかしい、隠したい」などといった的外れな会話をよく聞きます。認知症から逃げる気持ちがいけないのですが、「認知症」という病名にも問題があるのではないかとと思います。みなさんは「認知症」を分かっていますか? 確かに「痴呆症」よりはマシですが、「認知症」という呼び名も今一つピンときません。まだ「ボケ」の方がわかりやすいのではないでしょうか?

 最近、私は以下のように思うのです。例えば80歳の人が、自分の顔を30年前の頃の写真と比較したとします。白髪が増え(毛があれば)、顔のシワも見るも無残に刻まれてきているはずです。身体の姿勢もへっぴり腰、猫背になって、身長も相当低くなっていると思います。老化は身体の至る所に現れるもので、脳も例外ではありません。

 80歳の人の認知症は白髪、老人姿勢と同じように老化現象と思います。「最近、髪が白くなってきた、腰が曲がってきた」というのを、それほど恥ずかしがるでしょうか? 隠すでしょうか? 認知症だけ特別な老化現象と扱うのは不自然です。そんなわけで、認知症という呼び名もそろそろ変えるべき時期に差しかかったと思われます。「脳老化症」あたりで良いのではと思います。

 フレイルが注目され始めています。フレイルとは、老後の虚弱という意味です。老後は筋肉、骨、心臓、肺のどれもが程度の差こそあれ、弱っていくのです。筋肉なら運動できなくなり、骨なら骨粗しょう症で折れやすくなり、心臓なら全身に血液を送れない心不全状態に、肺なら十分呼吸ができなくなり息切れしていきます。そして脳にフレイルが起これば認知症ということになります。認知症は「脳フレイル」と呼んで良いかもしれません。

 100歳時代は老化、フレイルとの戦いです。認知症が途中で現れても、ちっとも不思議ではありません。むしろそこまで長生きできたことを喜ぶべきです。前向きに、そして気楽に認知症と向き合っていきましょう!

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